ESD21オープンフォーラムに参加しました

一般社団法人 持続可能なモノづくり・人づくり支援協会(ESD21 http://www.esd21.jp/gaiyou.html)さん主催のESD21オープン・フォーラム "三方良し"「TPS/アジャイル開発法の実践的適用事例」(https://www.esd21.jp/news/2011/05/post-13.html)に参加しました。

TPSとアジャイルについて

  • ESD21会長 黒岩惠氏

黒岩氏は元トヨタの情報系の方。TPSは海外ではリーン生産方式として一般化され普及しており、そのバリエーションとしてアジャイル生産方式というものがあった。これがITソフト業界へ波及しアジャイル開発となっているが、元々は日本発の考え方である、と。TPSを取り入れたマネージメント方式は多々あるが、TPSが人間系(人づくり)であることを取りこぼしているものが多い。ハード的なモノづくりはTPSで、ソフトはアジャイルで、強みをかけ合わせて日本が元気になることを願う、と。

TPSのITソフト開発への展開について

  • 豊田マネージメント研究所 副社長 高木徹

昔お世話になった高木さん。今はTPSのコンサルティング会社をやっているとのこと。海外の会社に対して数多く指導している。リーン生産方式はかなり普及しているが、表面的なものが多い。TPSの基本は人づくりなので、現場リーダーの成長を促すようなやり方にすべき、と。

アジャイル×DDD×アーキテクチャ

  • グロースエクスパートナーズ 取締役 北条育男氏

これまでの開発は防御的すぎて身動きが取れず、今日的なスピード感がだせない。問題がないとしたらそれはなれあいであることが多く、それでは競争力がない。これからのソフトウェア開発に求められるのは、機敏さと柔軟さであり、それによって安定と持続性が得られる。
アジャイル開発も段階を踏んで変化してきており、初期のアジャイルブームにおいてプログラマーの職人性に多く依存した方法が紹介されたが顧客の関わりが少ないのでは成功は難しい。今はアジャイルマネジメントの型としてSCRUMが普及してきている。ここで重要になるのがモデル。顧客の求めるものをうまくモデル化して実現していくアーキテクトが求められる。このやり方は「ドメイン駆動設計(DDD)」と言われているとのこと。ドメイン駆動開発についての詳細な説明がなかったのが残念(書籍「エリック・エヴァンスのドメイン駆動設計」が参考になるとのこと)。

TPS/Agileを具現化する日本発の開発手法「ユニケージ」

  • ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所 所長 當仲寛哲氏

ユニケージ手法とは、シェルスクリプトだけで業務システムを作成する手法。フラットなテキストファイルとコマンドの組み合わせでシンプルにシステムを作る。これはUNIXの考え方そのもの。書籍「ユニケージ原論」あり。講師いわく、現在のITは難しく考えすぎて失敗している。また、ソフトという名前に反して変更がきかない固いもので、経営の足をひっぱっている。それではだめ。ユニケージではシンプルな考え方で早く柔軟なシステムが作れる。だからこそフィードバックを得て改善することもでき、開発者が成長する。顧客と開発者の良好な関係が築ける。TPSとアジャイルはいずれも人の活力に注目して、改善し続ける集団を志向する。そこにおけるコミュニケーションはビジネス価値の追求と技術的研鑽の上になりたつ、自律と協働であろう、とのこと。

感想

セミナータイトルは「TPS/アジャイル開発法の実践的適用事例」だったが、プロジェクト報告というよりも、TPS/アジャイル開発を普段から普通に行っている人たちのお話しを聞くという感じでした。
特に興味を持って聞けたのは最後の當仲氏のユニケージ手法。UNIXの哲学そのままにテキストファイルとシェルスクリプトで業務システムが開発できるというのは驚きだし、本質的な筋のよさが感じられます。もっと詳しく学んでみたいと思いました。
また全体を通して、改善と成長を中心に据えた組織活動の重要さが説かれており、TPSもアジャイルも形式的に捉えてどうこうではなく、組織文化と融合して自然に用いられていると感じました。