ホフステードの文化次元論を参考に日米の文化の違いとアジャイル導入について考察してみる

スクラム現場ガイドに「情熱プログラマーで紹介されている」と紹介されていた「ホフステードの文化次元論」に基づいてアメリカ(アジャイル発祥の地)と日本(アジャイル導入先)の文化的特徴の差異を考えてみたらいいんじゃないか。と思ってしばし調べてみました。

参考にしました:

権力格差許容度(Power distance index)

権力格差を許容する傾向にある社会では、部下は上司の指示に従うもの、指示を待つものと考える傾向がある。そうでない社会では、部下が自律的に動くことを期待する。

  • アメリカ:40(ポイント。以下同)
  • 日本:54

アメリカと日本はわりと近くて中庸な感じなので、この指標に関しては特に考慮することはないか。

個人主義傾向(Individualism)

対極は集団主義的傾向。個人主義社会では、構成員は自分の利害に応じて行動する、キャリアは自己責任と考える。自由ややりがいが重要。集団主義社会では、構成員は組織という擬似家族の一員であり忠誠を誓う代わりに保護を受けることを期待する。教育、環境が大事。

日本はほぼ中間くらいだけどアメリカは非常に高い。アメリカ発の方法論がこの傾向を暗黙の前提としているとすると、配慮が必要な点かもしれない。
アジャイルは非常に集団主義的な方法なので、どちらかというと日本では受け入れやすく、アメリカの方が受け入れられにくいかもしれない。

男性性志向(Masculinity)

有能であること、勝者を敬う文化傾向。そこから達成、結果志向。対極としては、ベストを尽くすことを評価する、弱者を思いやる傾向。結果よりもプロセスや貢献を志向。

これもアメリカより日本の方が著しくこの傾向が強いとされていることに驚かされる。itim internationalの加藤氏の分析によれば、日本は集団同士で競争意識が高い、職人気質という形で完璧主義であるところにこの傾向が現れているとしている。品質志向が過剰な形で非アジャイルに働かないようにするといいということかもしれない。

不確実性の回避傾向(Uncertainty avoidance index)

不確実な状況や未知の状況に対して不安を感じる程度。几帳面さや規律正しさに繋がる。対極としては奇抜なアイデアに寛容で革新を生み易いなど。

過剰な計画主義、Big Design Up Front志向になりがち、やり方を改めること(特になにかをやめること)を嫌がる傾向、などだろうか。アジャイル開発は変化を受け入れ自分たちのやりかたも変えることを厭わないので抵抗があるかもしれないが、その必要性を理解するとともに、そうしてもチームやメンバーは守られるという感覚が必要かもしれない。

実用主義傾向(Pragmatic)あるいは長期志向(Long-term orientation)

長期志向で、現実的、実用的志向。対極としては短期志向で規範的、原則主義的。

期間固定でスコープ可変なやり方、改善志向に抵抗を感じるとしたら、この傾向によるものだろうか。

充足的か抑制的か(Indulgence versus restraint)

人生は楽しくやればうまくいくと考える傾向。対極は抑制・我慢することが人生で楽しみはご褒美と考える傾向。

これはどう影響してくるだろうか。アジャイルは開発チームが楽しくやるためのゲームっぽくて受け入れられないという批判も聞いたことがある。アジャイルは武士道、みたいな捉え方にしてもいいのかもしれない。

うーん、ふわっとしてますね。

集団の持つ文化ってのを論じるのも難しいし。当たり前ですけど集団は個性ある個人の集まりですし。部分集団ごとに傾向が違ったりしますし。自分が関連しているチームのメンバーにフォーカスして、この考え方やり方は合うかな、合わないとしたらどうしたらいいかな、と考えるのがせいぜいのような気がしてきました。