ロン・ハズバンドが教えるクイックスケッチ
ロン・ハズバンドが教えるクイックスケッチ 瞬間を描きとめる:アーティストのデイリートレーニング
- 作者: ロン・ハズバンド,Ron Husband,平谷早苗,株式会社Bスプラウト
- 出版社/メーカー: ボーンデジタル
- 発売日: 2015/05/17
- メディア: 大型本
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著者のロン・ハズバンドはディズニーのアニメーター(グレン・キーンと同期だそうです)であり、美術教育にも取り組んでいる人だということです。
スケッチから学べることはたくさんあると思いますが、この本は動きとその背景、つまり物語を観察し掴みとり、シンプルな線で描きだすことの雄弁さと楽しさを、豊富な作例で教えてくれます。
とてもよい本です。図書館で借りてきたのですが、手元に置いておきたい。
クイックスケッチは、スキルのレベルを最高の状態に保ち、創造性を枯らさないための最高の方法です。高い観察眼を維持し、手と目をスムーズに連携させるには、日常的に描き、継続することが重要です。
本書は、クイックスケッチとそのテクニックを説明しています。ポジティブシェイプとネガティブシェイプの観察、複雑なフォームの中に単純な基本形状を見つける方法から、アクションの分析、アクションラインの使い方まで。ディズニーのレジェンドが、スケッチの基本要素と、短時間で描くための方法を教えます。
クイックスケッチによって向上した能力のひとつが、すばやいアクションの分析です。現在では、人や動物の動きを目にすると、その基本形状やそれを構成するさまざまな形状(全体としてまた部分として)を把握することができます。描いている対象の空間内での関係性を短時間で見て取ることができるのです。アートに必要な着眼点に目を開かせてくれました。
クイックスケッチのもうひとつのメリットは、「サムネイル」です。サムネイルはクイックスケッチから自然に生まれたもので、クイックスケッチを小さく描くだけです。シルエットの強弱(濃淡)、遠近法、比率、形状、筋肉組織、骨格構造などの原則を使うと、サムネイルなら、イラストがどのように見えるかが早い段階でグラフィックスとして把握できます。本来のサイズで描いたときに遭遇する問題も事前に分かります。
クイックスケッチによって腕をみがいていくうちに、私は自分の上達パターンに気がつきました。同じことを表現するのに、以前よりも少ない線しか必要ではなくなるのです。クイックスケッチの目的のひとつは、対象に関する最大限の情報を最小限のライン、最短の時間で表現することです。
一日あるいは一週間描かずにいると、紙におろすペンのストロークのリズムが崩れ、単純な形状を「見て取る」能力が弱まり、クイックスケッチをしているときには感じられる自然な流れを感じることが感じることができなくなります。何かを伝える力のあるラインは、かんたんには描けるようになりません。
クイックスケッチを習得する利点は、アートの世界の別の側面にまで及びます。より自信を持って紙に描きだせるようになり、コンセプトを理解することでより早く、よりよい製作が可能になり、描く対象がどうしてどのように動くのかを理解できます。そしてなにより本当に楽しいのです。
クイックスケッチは楽しんで行ないましょう。スケッチを満喫しましょう。なにが起こっているのかをじっくり観察(分析)し、アートの授業で学んだ骨格、筋肉組織、比率、遠近感、シルエットの濃淡、形状を考慮してスケッチすると、分かりやすく芸術的になります。
クイックスケッチの原則
- 自分が描くスケッチについて、「誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように」を明確にすることを忘れない。
- いつでもスケッチブックを持ち歩き、常に描く。
- 自分自身に問いかけてみよう。「どれほど創造的な人間になろうというのか?月並みでいいのか?能力の一部分しか活用していないのではないか?ポーズの最初のコンセプトはそれでいいか?身体的(体型)、感情的(ボディランゲージ)、性格的(ストーリー)な観点から、ジェスチャーの可能性を徹底的に検討したか?このポーズは最適だろうか?何か見落としてはいないか?そのポーズに別の可能性はないか?」
- 作品を他人に見てもらうことをためらわない。見てもらうことで自信がつく。
- 頭に思い描けることを適切に伝える妨げが、スケッチの能力の不足であってはならない。描いて描いて描きまくろう。
基本
- クイックスケッチとは目の前にある生命ある対象を20〜30秒程度で紙に描くこと。
- 起きていること、つまり、「誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように」をはっきりと描きだす。場所や時間は必ずしも明らかにする必要はないが、誰なのか(子供、大人、女性、男性の別)、そしてなにをどのようにしているのかを一目で見てわかるように描く。
- 題材をシンプルな形状(円、三角形、四角形)またはこのような基本形状の組み合わせで捉える。目をそれに慣らす。
- 体型に着目する。
- 体は曲がる(曲がりやすい)ところと曲がらない(曲がりにくい)ところがある。
- 重心
- すべてを描ききらなくても、ある程度描けば目が補完する。
アクションの分析
- よく観察する。人にはそれぞれ肉体的または精神的な特徴があり、独自の個性となっている。独特の性質を探して描く。そっくりそのまま写し取るのは写真の仕事。できるだけ少ないラインによってアクションについての十分な情報を提供し、「らしさ」を誇張する。
- ポジティブシェイプとネガティブシェイプ(空間、隙間。音楽の休符のようなもの)を観察する。
- 姿かたちを描くだけでなく、動き(アクション)を観察し、描く。
- 髪や服などの慣性(遅れてついてくる)とドラッグ(ひきずられる)が、アクションを雄弁に語る。
- 対象の体につながったプロップ(セット、衣装、小道具など)を的確に用いて表現する。
- 「誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように」
- アクションライン(アクションの中に見られる方向性、流れの線)。アクションの方向やサイズを定める、これから描いていくスケッチの骨組みとなる。クイックスケッチの対象はポーズを取って止まっているわけではないので、心の目でアクションラインを見定める。
- 場合によっては、アクションラインを明に描いてもいい。
- ボディランゲージに語らせる。
- アクションを雄弁に語るタイミングを考える。アクションを起こそうとしている瞬間、あるいはちょうど完了させたところ。
- ただ立っているだけの人物もストーリーを語る。体型、服装、姿勢、ボディランゲージ、プロップが語る。
- 歩きもいろいろ。歩幅、足を出す向き、視線、荷物、ながら動作。グループでの歩きでは体型のコントラストがメッセージを強める。