うつむくことないさ、さあ、前を向いて行こう

愛知県全域をホームタウンとするサッカーチーム名古屋グランパスがJ2降格となってしまいました。非常に残念なことです。しかしちゃんとしたルールに従って戦った結果なので、その事実は受け入れます。と同時に、その過程で感じたことにはとても受け入れがたい感情を覚えます。中日新聞の記事の抜粋を軸に、それについて書き残しておこうと思います。

11/4(降格が決まった試合の翌日)朝刊

残留争い 重圧につぶれる(浅井俊典)
プロのサッカーチームはF1マシンのように繊細で、わずかな狂いが生じるだけで、大きく性能を落としてしまう。(中略)監督交代や闘莉王の復帰では繕えないほどに深かった。

毎年のように、監督と選手、スタッフとの間の意識共有の弱さがあることが報じられるチームです。よくこれまで「大きく性能を落と」さずに(つまりJ2降格したり)しないでこれたな、という感じです。今年は例年となにが違ったのでしょうか。

記者の目(浅井俊典)
(小倉氏の)手腕が未知数でありながら、フロントの一人は「自信ありげな姿に期待してしまった」と振り返る。
小倉氏の人事は強化担当部署のチーム統括部、今年から親会社となったトヨタ自動車からの出向幹部らが決め、トヨタが承認したとされる。

新しく就任する人が自信ありげなのはあたりまえだし、そんなことで半年以上勝ち星なしでも「期待し」続けてしまう
なんてことはできないので、その後の文章が肝なのでしょう。要するに、トヨタが決めたことだからもう変えられなかった手出しできなかったという。

11/5

名古屋 久米社長辞任(無記名)
(記者)フロントの迷走はどこに原因があったのか?
(久米前社長)社員50人ほどのクラブなのに、名古屋市内の事務所と愛知県豊田市内の練習場に分かれていて、最後までフロントを束ねるのに苦心した。クラブの宝は選手。選手に近いところで全員が仕事をすべきだったが、それを実現できなかった。」

現場現物をうたうトヨタの出向者にあふれるたかだか50人規模の子会社ですらこれです。

検証記事 必然の結末(1) 監督人事 崩壊の序章(浅井俊典)
クラブ幹部によると、実は昨季終了後、新監督候補にジュロブスキー監督の名が挙がっていたが、ことし親会社になることが決まっていたトヨタ自動車が「知名度がない」と難色を示したという。
小倉前監督が編成したチームは機能せず、選手からは「戦術がない」と不満が出た。

まあ、片方の意見だけを取材して、相手方への確認取材をしているのか怪しい気がするので、これら記事もどこまで信用していいか分からないですけどね。トヨタ(の誰か)の意向に振り回された、と感じる人はいたんでしょうね。そして選手たちが(またしても)犠牲になっていたと。

11/6

必然の結末(2) うるさ型 排除の代償(浅井俊典)
クラブ関係者によると、昨季限りで監督を退任した西野朗氏は当時ゼネラルマネージャー補佐だった小倉前監督に「闘莉王を来季も残すべきだ」と助言した。
ただ、小倉前監督はこうした「うるさ型」の選手を許容せず、その価値に目を向けることもなかった。
指示に従順なおとなしい組織をつくっても勝てないことは、降格を招いた小倉体制の不振が証明している。

小倉の肩を持つなら、辞めていく前任者の助言を聞く義理はない(っていうか、前任者ができなかったことをやるために後任に来たわけですから)です。中日新聞は小倉にも取材して、両方の言い分を報道するべきなのではないでしょうか。

ちなみに僕は中日新聞さんにも責任あると思ってます。普通の人が知り得ない情報を取材して得ることができる立場にあるのに、シーズンが終わるまでなまぬるい近視的なことしか書かない。そうじゃなくて、内部がやばい状態になっているなら、その時にそれを報道して改善を訴えることができたはずです。そうじゃないなら何のための報道メディアなんでしょうか。事後報告と後出し分析が仕事だと思っているんでしょうか。

11/7

必然の結末(3) 補強 その場しのぎ(深世古峻一)
J1制覇を遂げてから、わずか6年での降格。急速な弱体化の背景は”トヨタマネー”をあてにした強化体質にある。
名古屋が「改革元年」と位置付けた今期、小倉隆史前監督は育成年代からの継続指導の重要性を訴えたが、絵に描いた餅に終わった。複数の主力選手はチーム強化について「一貫性がない」と漏らし、不信を抱いている。

小倉だってまともなことを言わないわけじゃないんですよ。結局誰がどうよくなかったのか、中日新聞は明言を避けたのでよく分かりませんが、大雑把にはわかってきました。

  • グランパスに関係するトヨタの人はちゃんとトヨタウェイに則って仕事をしてください
  • 中日新聞は後出し記事ばかり描いてないで、ちゃんと言うべきことを言うべき時に書いてください

僕は名古屋が一年でJ1に復帰する、二年でJ1優勝争いができるチームになる、三年でアジアNo1のチームになる、なんてのはどうでもいいです。目標としても妥当だと思っていません。

名古屋グランパスエイトの目的はなんなのか、関係者はもういちどよく考えて欲しいです。

名古屋の名を背負って戦うこと、その名古屋グランパスを応援することは、誇らしいことと感じられるようになること。だと僕は思います。勝つか負けるかだったら勝つほうがいいですけど、ストロングポイントを消され弱点を突かれて負けることもあるでしょう。けど、それを補うためにできるかぎりのことをする、全力を出す、その姿が誇らしいと感じさせて欲しいんです。

そういうことが不断にできるチーム、クラブになってほしいんです。そのためにちいさな目標をいくつも置いて、その達成度をみていく、問題があれば「ラインを止めて」カイゼンする、そういうチーム、クラブに、どうやったらなれるのか、だと思うんです。そしてそのノウハウと人材は親会社と社内の出向者にいくらでもあるはずです。よろしく頼みます。