ネガティブ・ケイパビリティ

読みました。

概要

ネガティブ・ケイパビリティ(negative capability 負の能力、陰性能力):どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力。あるいは、性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力。

判断や問題解決の能力(を総称してポジティブ・ケイパビリティと呼ぶ)はえてして問題の表層のみを捉えてしまい、問題の真相にある本当の問題を取り逃がす。また、問題の解決法や処理法がない状況に弱い。しかし、現実世界はどうにも変えられない、取り付くすべもない事柄に満ち満ちている。だからネガティブ・ケイパビリティが重要になる。

感想

ネガティブ・ケイパビリティという概念は非常に興味深い。確かに私たちは理解や答えを性急に求めすぎているかもしれない。既知の問題に当てはめて目の前の事象やそこに存在する人の心を見逃してしまったり矮小化したり取り違えたりしている可能性は大いにある。現在の技術や知識やその人の立場からでは無力な場合があり、それを受け入れ、その上でできること、傾聴だったり共感だったり、そういう行為が実は最大の効果を発揮するということもあるだろう。このことを言語化し紹介してくれた点でこの書籍は大いに価値がある。

だが同時に、それ以上ではなかった。判断を保留することの価値はわかったが、同時に私たちは判断と選択をしながら生きていかざるを得ない。判断も選択もしないということも判断と選択のひとつでしかない。負の能力という概念を知ってさらに私たちがどう生きるかについての提言を筆者はしていない。本書の中盤以降は退屈だった。